生成AIを活用したプレゼンテーション講座を開催
-科学的リテラシー教育の新たなアプローチ
生成AIを学び、放射線リテラシー教育に活かそうと、理学部の中村麻子教授(副学長)の研究室で4月9日、「生成AIを活用したプレゼンテーション講座」が開かれました。講義とワークショップを通じて、これからの時代に求められる生成AIの活用と、科学的事実の伝え方を考えました。
講座には、中村研究室所属の学生を含めた12人が参加。講師はソフトバンク株式会社CSR本部の五十嵐祐二さんが務め、「生成AIを知る?体験する」、「プレゼンテーションを考える」と題して講義しました。
講師の五十嵐さん
五十嵐さんは「テクノロジーは後戻りできません。好む、好まざるにかかわらず、AI時代はやってきます。どう向き合うか、付き合うかしかありません」とAIへの姿勢について語り、AIの開発の歴史や仕組みについて解説しました。
生成AIを有効活用できれば、生成AIが作業中に人間は別の作業に集中できたり、小さな効率化を積み重ねて時間を創出したり、対応できる業務領域が広がったりするため、「AIは人間とともに働くパートナーです」。一方、生成AIのもっともらしいうそ「ハルシネーション(幻覚)」には注意が必要だと言います。五十嵐さんは、その心得として、①情報源を確かめる②一次情報を確認する③「事実」と「意見」の違いを見極める④ほかのメディアと見比べる⑤情報が発信された時期を確認する⑥情報発信者の目的や認知バイアスを考える―の6つが重要だと話しました。
続いて、グループに分かれて生成AIを実践するワークショップを行いました。テーマは「放射線教育を考える」。科学的事実以上に恐れられがちな放射線について「どう伝えれば正しく理解してもらえるのか、より幅広く放射線に興味を持ってもらえるのか。AIとともに科学を社会へ届ける力を磨いてほしい」という中村教授の思いが込められています。中村教授は「間違ったことを伝えるのはダメだけど、厳密さを恐れずやってみてください」と学生たちに挑戦を促しました。
中村教授
サブテーマを①放射線教育をもっと伝わる形にするには?②生成AIを放射線教育にどう活かせる?③放射線に関するよくある誤解をどう伝え直せる?④その他―から選び、情報を届けたい相手を設定し、資料作成スタート。放射線の誤解をどう解くか、どう身近なものと結び付けてもらうのかを話し合う声が聞こえてきます。
グループで話し合い、プレゼン資料を作ります
資料に挿入する画像も生成AIで作成
いよいよ発表です。対象とする受け手(例:小中学生、一般市民など)を明確にした上で、PREP法(Point?Reason?Example?Point)で作成したプレゼン資料を使って行いました。
「小中学生向けに放射線教育を行う人」をターゲットに、小中学生向けの放射線教育に生成AIをどう活かせるか考えたグループは、「生成AIを活用することで放射線教育がよりわかりやすく、対話的で、身近なものにする」と主張。教育者や保護者によって専門知識や認知に差があることを課題として挙げ、生成AIを活用すれば、知識を補ったり、児童生徒の年代や使用言語に合わせた教材を作成したりできると説明し、再度「生成AIは放射線教育の新しいパートナーになり得る」と結論付けました。
PREP法を効果的に展開できているかは、ChatGPTが評価しました。こちらのグループは100点満点中91点。ほかの3グループも84~91点と軒並み高評価でした。参加学生の学びの深さがうかがえます。
セミナーを終え、中村教授は「一言で表すなら、『本当にやって良かった!』に尽きます」と振り返ります。知識を習得するだけでなく、その本質を見極めて自分の知恵として活かし、それを社会に伝えることが重要だと考えているそうで、「伝える手段として生成AIが非常に有効であることを改めて実感しました。放射線教育や科学リテラシー向上において、生成AIを活用する視点がますます重要になっていくと強く感じました」と取り組みの意義を語りました。
AIポーズで記念撮影
実はこの記事のタイトルも、学生たちと同じく生成AI(ChatGPT)に相談し、提案してもらいました。今回の講座は、新たな技術とどのように向き合い活用していくのか、その実践の場となりました。
(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)